中からも外からも冷やして防ぐ熱中症 - 身体冷却アイデア5選

公益財団法人日本スポーツ協会が推奨しているスポーツ活動中の「熱中症予防5ヶ条」の中のひとつに、「冷やそう、からだの外から内から」があります。近年の酷暑傾向を受け、2025年に「薄着スタイルでさわやかに」から改訂されました。今回はスポーツ現場で実践しやすい身体冷却のアイデアを紹介します。

パフォーマンス低下を防ぎ、熱中症対策に不可欠な「内部・外部冷却」とは

暑さの中での運動は、深部体温(脳や内臓など身体の中心の温度)が上がり、パフォーマンスの低下や熱中症の原因となるため、体温が上がりすぎないようにコントロールすることが大切です。体温をコントロールする方法は、衣服や防具を調節することのほかに、身体冷却があります。

身体冷却は、体表からの冷却(外部冷却)と体内からの冷却(内部冷却)に分けられます。両者をうまく活用することによって、深部体温を抑え暑い中でも活動しやすくすることができるでしょう。また、冷却を行うタイミングによって、運動前(プレクーリング)、運動中(パークーリング)、運動後(ポストクーリング)と呼ばれ、活動中に複数回の身体冷却を行うことで、体温の上がりすぎを防ぎます。

プレクーリングではウォーミングアップ中の過度な体温の上昇を防ぐこと、パークーリングでは急激な体温の上昇を防ぐこと、ポストクーリングではリカバリーを目的に身体冷却を実施します。

身体の中から・外から冷却するアイデアをご紹介しますので、皆さんの活動中に取り入れやすい方法やタイミングに合わせてぜひ実践してみてください。

アイデア① アイススラリーを飲む

アイススラリーとは、スポーツドリンクなどをシャーベット状に凍らせた飲み物で、飲むことで深部体温を下げる、または上昇を抑える効果があります。「運動前」や「休憩中」などの水分補給として活用できます。凍ったスポーツドリンクをミキサーなどで細かくくだくことによって自宅でも作ることができます。

アイススラリーがない場合には、水筒を振ると音が鳴るくらいの氷を水筒に入れて冷やしたドリンクを飲んだり、氷を口に含んだりすることで同様の効果が期待できます。

冷たいものを飲むことによって胃腸の不快感を抱く場合もあるため、選手個々に合った適切な摂取量とタイミングで実施することが大切です。

アイデア② 手のひらや足の裏を冷やす

手のひらや足の裏には動脈と静脈を結ぶ血管の部位(動静脈吻合:AVA)があり、ここを通る血液を冷やすことで冷たい血液が全身を循環して深部体温を下げることが期待できます。

バケツやクーラーボックスなどに水を張り、氷で10度から15度程度に冷やします。「やや冷たい」と感じるのが10度から15度の目安です。5分から10分前後、手のひらや足の裏を漬け、冷やします。「休憩中」や「運動途中」に急激な体温上昇を抑えたいときは、冷やす面積が広ければ広いほど、冷却効果が高まるので、手のひらの場合には前腕も、足の裏の場合にはふくらはぎも冷やすとよいでしょう。

バケツやクーラーボックスなどがない場合には、握って「やや冷たい」と感じるペットボトルを当てて、活用することもできます。

注意しなければならないのが、動静脈吻合がある部位を保冷剤など(0度以下のもの)を使って冷やしすぎることです。冷却刺激が強すぎると、この動静脈吻合は閉じてしまうため、逆効果になります。

アイデア③ アイスベストを着る

アイスベストとは、冷却剤や保冷剤がポケットに入ったベストのことで、首や胸、脇や背中を保冷剤で冷やすことができます。アイスベストを着用して、ウォーミングアップをすることによって、ウォーミングアップ中の過度な体温の上昇を防ぐことが期待できます。

ただし、冷却剤や保冷剤の重さなどが動きの邪魔になったり、身体と擦れたりする可能性もあるので、アイスベストを着用するウォーミングアップの内容は検討する必要があります。

アイスベストがない場合には、外で身体が濡れても大丈夫であれば、ゼッケンを氷水にひたしてあまり絞らずにTシャツの上から着るという方法もあります。

アイデア④ アイスタオルを首にかける

テニスの試合の休憩中によく映像で見かけるのが、アイスタオルです。氷が入ったビニール袋をいくつか作り、大きめのタオル(バスタオルなど)でくるんで、ビニール袋がタオルから出てこないようにテーピングで巻いて固定したアイスタオルを作っておきます。このアイスタオルを首にかけることによって、タオルが大きいので後頭部や首、脇の下を同時に冷やすことができます。

アイデア⑤ アイスバスに全身をつける

運動後30分以内に10度から15度の氷水に8分から15分程度つかることで、運動後のリカバリーとして効果的なのがアイスバスです。深部体温をコントロールするだけでなく、筋肉痛の解消や疲労回復などのコンディショニングとしても活用されています。

筆者がアメリカの高校でアスレティックトレーナーとして活動していた時には、水温と時間は選手たちのアイスバスの経験度によって調整していました。

例えば、1年生などのアイスバスが初めて、または経験がまだ浅い選手は、13度から16度で2分から5分、定期的にアイスバスを利用している選手は、10度から13度で5分から10分、さらなるクーリングを自ら希望する選手は、7度から10度で10分から15分という目安で実施していました。アイスバスが用意できない場合には、冷たい水のシャワーも効果的です。

組み合わせの工夫・身体冷却実践例

上記に紹介した身体冷却の全てを実施しなければならないということではなく、皆さんが活動されている現場で活用できる方法から取り入れてみてください。最後に、実際に筆者が夏の活動中、選手たちに伝えている内容をご紹介します。

運動前には、アイススラリーを持って手のひらを冷やしながら、アイススラリーを飲んでもらいます。

試合のハーフタイム(練習日なら休憩中)では、アイススラリーを飲みながら、近くに水道がある場合は、首や腕などに水道水をかけてもらっています。また、1つもしくは2つくらいの氷を渡して、首や腕、脚などをマッサージするように当ててもらいます。

試合後にはリカバリーが大事になるので、冷房の効いている部屋やシャワーがあれば、なるべく早く使用し冷やすように伝えています。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、日本健康医療専門学校、横浜スポーツ&医療ウェルネス専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター