暑熱下でも安全にスポーツを楽しむ工夫

暑熱下でスポーツをする際に注意しなければならないのは熱中症です。暑い時期でも熱中症を防ぎながら子どもたちがスポーツを楽しめるような工夫やコツについて、明日から実践できる具体例を含めて紹介します。
熱中症を予防し、安全に楽しくスポーツを行うために大切なのが、暑熱順化や水分補給、体調管理などです。

いつでも自由に水分補給できる環境に

運動の量、環境、体質により異なりますが、運動中における発汗量は1時間に2リットルに及ぶこともあります。
そこで重要になるのが、自分のタイミングで適切に水分補給が行える工夫です。

練習の邪魔にならない所で、子どもたちの練習中の動線に近い場所に各自の水筒を置くスペースを用意し、子どもたち全員がしっかりと水分補給ができる「ウォーターブレーク」に加えて、いつでも子どもたちが自由に水分補給できるように工夫しましょう。
また、チームで用意するのではなく各自の水筒を用意してもらうことで、減り具合を確認し、どれだけ補水できているか把握しやすくなります。

さらに、練習前に同じポジションの子ども同士をペアにして、お互いの水分補給や体調のチェックをし合うようにするなど気遣えるようにすると良いでしょう。
それでも子どもたち自身だけに任せるのではなく、指導者や保護者などスポーツ現場にいる大人が子どもたちがしっかりと水分補給しているかを把握・管理することは必要です。

帰宅後は余りの量と、足りていたか・チームから補充があったかを確認し、次回以降は十分な量を持たせるようにしてください。

水遊びでチームビルディング

水分補給に加えて熱中症予防で重要になるのが、暑熱順化です。

暑さに慣れていない時期は特に、朝早くまたは夕方などへ練習時間をずらし、暑い時間帯を避けましょう。

暑い時間帯だけでなく、練習時間の長さや休憩時間の長さ、身体を冷やすことも身体を暑さに慣れさせていく過程では重要です。例えば、小さなビニールプールを用意しておくと、いつでも身体を冷やすことができ、休憩を兼ねながら涼が取れるメリットがあります。

また、練習中に水遊びを取り入れることによって、練習時間が短くなり熱中症を予防することができます。水遊びの代表的なものとしては水鉄砲や水風船があります。水鉄砲や水風船の良い点は、ずっと動き続けることができない点です。

水鉄砲は中身の水を使い切ってしまったら、必ず水を補充しなければなりません。水の補充をしているときは自然に身体を休めることになります。
水風船の場合には、1回に持てる個数を制限することによって走り回る時間をコントロールすることができます。水鉄砲や水風船で遊んでいるときには走り回るので、運動強度を高く設定することができる一方で、運動時間を調整しやすいため、熱中症を予防しやすくなります。

水遊びは熱中症の予防として活用できますし、チームビルディングとしての位置づけで取り入れることもできます。

水遊びという普段の練習とは違った環境下で活動をすることによって、いつもとは違う関係性が生まれたり、いつもとは違うコミュニケーションの機会が生まれたりします。

サッカーで言えば遠くにキックできる選手とあまりキックできない選手でも、水鉄砲の場合にはどれだけ飛ぶかは身体の差ではなく、持っている水鉄砲の違いになります。サッカーであれば遠くにキックできる選手が活躍しますが、水鉄砲であれば、活躍しにくい状況に置かれるかもしれません。水風船の場合では、キックが苦手な選手でも水風船を投げることは得意かもしれません。

水遊びが今までとは違うチームメイトの一面を知る機会になるでしょう。

作戦会議の時間を活用

これらの熱中症予防策に加えて、活動時間と休憩時間の割合などの練習設計を工夫するという方法もあります。

暑熱下の休憩時間を熱中症予防だけでなく、練習の質向上のための話し合いや作戦会議の時間として有効に活用しましょう。

暑熱下では、テントの中など日陰で休みながら水分補給をすることが大切です。冬場においては身体が冷えてしまうため、休憩時間を長く設定することはできませんが、暑熱下では、休憩と水分補給を兼ねて、戦術や練習内容の確認にしっかり時間を使うことも熱中症の予防やパフォーマンス向上につながります。

その際は、コーチから選手たちへの指示やフィードバック、キャプテンや副キャプテンなどの選手からの指示やフィードバックなどの一方的なものだけでなく、選手間でコミュニケーションができる話し合いをしましょう。

選手間でコミュニケーションを取る話し合いは時間がかかりますが、暑熱下の休憩時間を十分に確保することになります。

暑熱下の休憩時間を話し合いや作戦会議の時間として活用することで、試合のハーフタイム中のコーチングスタッフとのコミュニケーション、選手間の意思疎通、チーム全体としての修正などに役立つ可能性があります。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター