-成長期の身体づくり- スポーツをする子どものための食事の基本

食事からしっかりとエネルギーと栄養素を摂ることは、健康の維持や身体を元気に動かすために重要だとご存知の方は多いと思いますが、スポーツをしている成長期の子どもは、身体を成長させるために必要な分に加えて、スポーツで使うエネルギーや栄養素をさらにしっかり摂る必要があることを知ってほしいと思います。そこで今回は、スポーツをしている子どもの食事の基本についてご紹介します。

なぜ「栄養バランス」が大切? バランス良く食べるということ

1日に消費するエネルギーは、大きく3つに分けられます。この消費量に見合ったエネルギーを、日々の食事から十分に摂る必要があります。

  • 生命維持のため(心臓を動かす、呼吸をするなど)
  • 身体活動のため(通学、遊び、勉強、スポーツなど)
  • 食事誘発性熱産生のため(食べ物の消化、吸収、代謝など)

スポーツをしている子どもは、していない子どもと比べて「身体活動のため」のエネルギーが多く必要です。さらに、成長期には身体の成長のためにも多くのエネルギーが使われます。

もし、食事から摂るエネルギーが不足した状態が続くと、健康や成長に影響が出たり、スポーツ中にバテやすくなったりと、パフォーマンス低下につながる可能性があります。だからこそ、スポーツを行う成長期の子どもは、日々の食事で十分なエネルギーを摂ることが非常に重要なのです。

では、食事からしっかりエネルギーを摂れていれば、どのような食べ方をしてもよいのかというと、そうではありません。身体の成長やコンディション維持、パフォーマンス向上のためには、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養素を過不足なく、バランス良く摂ることが大切です。

栄養バランスの良い基本の食事とは?

必要な栄養素を計算しながら毎日の食事を準備するのはなかなか難しいかと思います。そこで、バランスの良い食事として、「主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物」の5種類をなるべくそろえて食べる食事方法があります。この5種類をそろえて食べることで、栄養バランスの良い食事になりやすくなります。

主食: ごはん、パン、麺などを主な材料とする料理です。主に炭水化物(糖質)の供給源となり、身体や脳を動かすエネルギー源となります。
主菜: 肉、魚、卵、豆・大豆製品(豆腐、納豆、厚揚げなど)などを主な材料とする料理です。主にたんぱく質と脂質の供給源となり、筋肉、骨、血液などの身体づくりの材料となります。
副菜: 野菜、いも、きのこ、海藻などを主な材料とする料理です。主にビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源となり、体調を整えます。
牛乳・乳製品: 牛乳、ヨーグルト、チーズなどです。主にカルシウムとたんぱく質の供給源となり、カルシウムは骨の材料になる、筋肉を動かすなどの働きがあります。たんぱく質は筋肉、骨、血液などの身体づくりの材料となります。
果物:果物と100%果物ジュースです。主にビタミン、ミネラルの供給源となり、体調を整えます。また、炭水化物(糖質)も多く含まれているためエネルギー源にもなります。

牛乳・乳製品と果物を食事で摂りにくいときは、補食(間食)としてバナナにヨーグルトをかけて食べる方法や、牛乳と果物を一緒に摂るといった方法もおすすめです。

朝食を見直しましょう

朝食は、作る時間も食べる時間の確保も難しいと感じている方が多いかもしれませんが、朝食でもなるべく5種類をそろえるのが望ましいです。時間のない朝だからこそ、時短のアイデアとして、前日の夕食で主菜や副菜を多めに作っておき朝食に食べる方法もおすすめです。また、納豆、ミニトマト、バナナなど、調理せずにそのまま食べられる食品をうまく活用しましょう。

スポーツをしている子どもの朝食のポイントは、スポーツをしていない子どもに比べてエネルギー源となる炭水化物(糖質)を多く含む主食を朝食からしっかり食べることです。5種類をなるべくそろえて食べるとともに、量もしっかり食べられるようにしましょう。

1品で主食、主菜、副菜を摂る方法

毎食、複数のメニューを準備するのは、大変ですよね。また、子どもが食欲がなくて何品もメニューを食べることが難しいこともありますよね。そのようなときは、1品で主食、主菜、副菜がそろうメニューがおすすめです。

カレーライス: ごはん(主食)、牛肉や豚肉などの肉(主菜)、にんじんなどの野菜(副菜)
ほうれん草入り親子丼: ごはん(主食)、鶏肉(主菜)、卵(主菜)、たまねぎとほうれん草(副菜)
具沢山冷やしうどん: うどん(主食)、炒り卵(主菜)、納豆(主菜)、きゅうりやトマトなどの野菜(副菜)

さらにデザートや補食に、ココアやヨーグルト(牛乳・乳製品)と果物を摂ることで、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物をそろえることができます。

外食時にできる工夫とは?

子どもがスポーツをしている場合は、週末の練習や試合後に外食をする場合もあるかと思います。外食の場合でも5種類がそろえられるお店を選ぶのが理想ですが、現実的にはなかなか難しいですよね。その場合は、外食時に食べられなかった種類を補食(間食)で食べる、前後の食事で多めに食べるなど工夫をしましょう。

例:昼食でうどん屋に行った場合(※昼食で摂れていなかった果物と牛乳・乳製品、補食で補っています)

外食の昼食: うどん(主食)、卵や鶏の天ぷら(主菜)、かぼちゃなど野菜天ぷら(副菜)
補食(間食): 牛乳(牛乳・乳製品)、オレンジ(果物)
自宅での夕食: ごはん(主食)、さけの照り焼き(主菜)、小松菜と厚揚げの煮びたし(副菜)、ひじきの煮物(副菜)、豚汁(副菜)、ヨーグルト(牛乳・乳製品)、りんご(果物)

特に不足しやすい栄養素を日々の食事で意識

成長期でスポーツをしている子どもが特に積極的に摂りたい栄養素のひとつがカルシウムです。カルシウムは骨の成長に欠かせない栄養素のひとつですが、小学校高学年から中学生が1日あたりに摂ることを推奨されているカルシウムの量は、大人と同等以上です。身長の伸びが止まった子どもでも、成長期は骨を強くすることが非常に重要な時期のため、カルシウムを摂取する食習慣を身につけましょう。

カルシウムを多く含む牛乳・乳製品を摂る機会が給食のみとなっていないでしょうか?お子さんと一緒にぜひ振り返ってみてください。牛乳・乳製品は、そのまま摂るだけでなく、シチュー、グラタン、ピザなど子どもたちが好きなメニューで摂る方法もおすすめです。

牛乳・乳製品のほかに、カルシウムを多く含む大豆・大豆製品(豆腐、納豆、厚揚げなど)、骨ごと食べる魚、青菜、海藻などを食事に取り入れましょう。また、カルシウムの吸収を促進させる働きのあるビタミンDを多く含む脂肪の多い魚(さけ、さんま、ぶり、いわし、さばなど)やきのこも食事で意識的に取り入れましょう。

食事について子どもと会話しましょう

保護者の方と子どもが食事に関する会話を日頃からしていくことも、子どもの食事を改善するためのポイントのひとつです。主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物の5種類そろう食事の話をお子さんとしていただいて、少しずつ食事を改善していきましょう。

最後に、よくある質問をご紹介します。

Q. 毎食の食事で主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物を摂る必要がありますか?
スポーツをしている子どもは、理想は主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物を、補食もうまく活用しながら毎食そろえて摂ることが理想ですが、現実的に難しい場合もあるかと思います。その場合は、1日の中で、それも難しい場合は数日かけて摂っていない種類がないようにしていきましょう。
 
Q. レトルト食品を活用する方法はありますか?
インスタントラーメンの場合は、主食だけとなってしまわないように、麺を煮る時に溶いた卵(主菜)を加えたり、冷凍コーンやほうれん草(副菜)を加えたり、なるべく主食、主菜、副菜をそろえることで、栄養バランスが良くなります。また、市販のレトルトカレーやレトルトパスタソースは、肉の量が少なくたんぱく質の量が多くない場合があるので、火を通したひき肉やゆで卵をプラスして、主菜を増やしましょう。

<著者>

管理栄養士 博士(体育科学)

小澤智子 氏

プロアスリートやジュニア選手の栄養サポート、スポーツや食品関連企業の研究開発サポート、子どもの栄養教育についての研究。2014年にはサッカー男子日本代表のコンディショニングサポート、2020年~2023年にはヴィッセル神戸アカデミーにおいて、小学生から高校生選手の保護者も含めた栄養サポートを実施。