その疲れ、練習しすぎかも—— オーバートレーニング症候群

好きなスポーツに一生懸命打ち込んでいた子どもが、急に疲れた様子を見せるようになったり、疲れたと口にするようになったりした場合、もしかしたら「オーバートレーニング症候群」が疑われるかもしれません。オーバートレーニング症候群とは、トレーニングの量や強度に対して休養が足りておらず、十分な回復ができないまま疲労が蓄積して、身体と心に慢性的な不調が出ている状態です。

オーバートレーニング症候群の代表的な症状は「慢性疲労」と「パフォーマンス低下」

オーバートレーニング症候群にはさまざまな症状がありますが、特に注意してほしいのが慢性的な疲労感とパフォーマンス低下です。

十分な栄養と睡眠をとっていれば2、3日で疲労回復できるはずなのに、疲労感がとれないままの状態、慢性的な疲労感はオーバートレーニング症候群の代表的な症状です。

さらに、オーバートレーニング症候群ではパフォーマンスが低下します。いつも通りの時間・量の練習やトレーニングをしているのに、パフォーマンスが低下している様子が見受けられたときは、オーバートレーニング症候群の可能性を疑うようにしてください。

オーバートレーニング症候群には、ほかにこのような症状が見られることもあります。
・食欲不振や過食
・不眠
・血圧や心拍数の変化
・集中力の低下
・情緒不安定 など

なお、子どもの慢性的な疲労感については、貧血、起立性調節障害、小児慢性疲労症候群といった病気が隠れている場合もあるため、医師の診断を受けたうえ、これらが否定されるようであればオーバートレーニング症候群の可能性を疑いましょう。

前段階の「オーバーリーチング」に気付き、数日の休養を

オーバーリーチングとは、オーバートレーニング症候群の前段階の状態で、身体が十分に回復していない状態でトレーニングを続けることで、パフォーマンスが上がらなくなることをいいます。オーバートレーニング症候群を予防するには、オーバーリーチングの状態になったときにしっかりと休養をとり、回復させることが大切です。本来であれば、トレーニング後の休養と回復によってパフォーマンスは上がっていきますが、オーバーリーチングでは疲労が蓄積して、パフォーマンスが上がりません。オーバーリーチングは、数日間の休養をとることによって回復します。

数日間の休養をとらずにさらにトレーニングを続けると、オーバートレーニング症候群になる可能性があります。

「パフォーマンスが上がらないから練習量を増やす」は適切か?

練習やトレーニングをしているのに、選手のパフォーマンスが上がらないときには、「努力が足りない」「もっと練習を増やそう」「もっと高い強度でやろう」と指導者はつい考えてしまいがちだと思います。しかし、練習量を増やす前に、オーバーリーチング状態になっている可能性も考えてみてください。このまま練習量を増やし続けると、オーバーリーチングからオーバートレーニング症候群になってしまいます。

練習やトレーニングをしているのにパフォーマンスが上がらないのであれば、「疲労がたまっていないか」「しっかりと休養はとれているのか」「トレーニング量や強度が適切なのか」などについて見直し、本人が回復したと感じられるようになるまで休養をとりましょう。

朝の様子と脈拍で分かる初期サイン

中学校や高校の部活動であれば、平日も活動しているため指導者が日常生活の変化に気付きやすいと思います。小学生など週末だけ活動しているスポーツクラブなどの場合は、日常生活の変化に気付くのは、まずは保護者となるでしょう。

スポーツ以外の習い事や勉強などが重なって、休養の時間が十分にとれていない場合にも、オーバートレーニング症候群になる可能性があるため、保護者の方は休養時間をとるように様子を見てあげてください。

たとえば、朝起きた時や朝食を食べている時などの様子から、疲れていないかをチェックできます。ほかに、ぼんやりしている、呼びかけへの反応が遅い、食べるのが遅くなった、好きなものなのにいつもより食べる量が減った、好きなことへの腰が重いなども、オーバートレーニング症候群の初期症状として、睡眠の質が低下したり、自律神経が乱れたりしている影響かもしれません。

参考としてご紹介しますが、プロのスポーツチームなどでは、朝の脈拍を測定しています。起床直後に安静時の脈拍を測り、普段の脈拍より10拍以上多い日が続く場合には疲労が蓄積されているサインだと捉え、対策するようにしています。家庭で脈拍測定までは難しいかもしれませんが、朝の様子を毎日ちょっと見る習慣を持つだけで、変化に気付きやすくなるでしょう。

「いつもと違うかも」と感じたときこそ、練習量を増やす前に、まず休養を検討してみてください。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、日本健康医療専門学校、横浜スポーツ&医療ウェルネス専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター