スポーツ中に起こる突然の心停止に対する救急対応は、胸骨圧迫と人工呼吸を交互に行う心肺蘇生法とAED(自動体外式除細動器)の使用です。心肺蘇生法は、1歳未満の子どもを「乳児」、1歳以上で16歳未満の子ども(中学生を含む)を「小児」、16歳以上を「成人」とし、対象の年齢によって実施方法が異なります。
今回の記事では、スポーツ安全保険加入者の中心である1歳以上で16歳未満の子どもを対象にした、「小児」の心肺蘇生法とAEDの使い方について解説します。
「緊急事態」かどうか?を判断
スポーツ中に人が倒れたら、まずは緊急事態かどうかの判断をする必要があります。倒れた人がどのような状態なのかを把握するために、早く近づこうと思いがちですが、周囲の安全を確認するようにしてください。
周囲の安全を確認してから倒れた人に近づきます。肩を軽く叩きながら、大声で呼びかけて、意識(反応)の有無を確認します。反応がなければ緊急事態と判断し、助けを呼び、119番通報とAEDの調達を周囲の大人に依頼します。これは「EAP(緊急時対応計画)の発動」を意味します。
反応の有無について迷った場合は、119番通報をして通信司令員に相談しましょう。通信司令員がどのように対応すればいいのか、電話越しで指示をしてくれます。
意識の次に確認するのは、呼吸です。昔は「呼吸の有無」で判断していましたが、今は「普段通りの呼吸をしているかどうか」で判断します。普段通りでない呼吸の例として、「死戦期呼吸」という心停止直後にみられる「しゃくりあげるような、途切れ途切れのあえぎ呼吸」があります。
この死戦期呼吸を「呼吸がある」と判断してしまうと、対応が遅れる原因となるため、胸やお腹の動きを見て10秒以内で、普段通りの呼吸をしているかを確認します。意識がなく、「普段通りの呼吸をしていない」または「普段通りの呼吸をしているのか分からない」場合には、迷わずに緊急事態と判断し、心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)を実施してください。
「小児」への胸骨圧迫
胸骨圧迫は、外的圧力により血液を脳や心臓の周りにある血管などに送ります。床が柔らかい場所で胸骨圧迫をすると血液を送る効果が得られにくいため、硬い場所で行います。柔らかい場所で倒れた場合は、硬い場所に移動し行います。
胸骨圧迫では、胸の中心にある平らな骨(胸骨)の下半分の位置に手を置き、胸板の約1/3の深さまで圧迫します。1分間に100回から120回のリズムで30回の胸骨圧迫を行います。また、圧迫するたびに胸骨に置いた手が元の位置に完全に戻ったことを確認して行ってください。元の位置に戻さずに次の圧迫をしてしまうと、十分な血液が心臓に入らず、脳や全身に送る血液が減ってしまいます。
「小児」の心停止に、人工呼吸が効く理由
子どもの場合、窒息や溺水など呼吸障害を原因とする心停止が多いため、人工呼吸はとても重要です。また、日本における新型コロナウイルス感染症蔓延中の小児院外心停止における胸骨圧迫のみの蘇生法と死亡率を調べた研究では、子どもの救命率が下がり、年間10.7人の助けられたはずの子どもの命が救えなかったことが推定されると報告されています[*]。
[*]子どもを救う“ひと息”が減っている!?~コロナ禍で蘇生時の人工呼吸が敬遠、小児の救命に影響~
また、JRC蘇生ガイドライン2020において新型コロナウイルス流行期における人工呼吸は、「成人には技術と意思があっても実施しない」となっているのに対し、「乳児・小児には、技術と意思があれば、人工呼吸を組み合わせて行ってよい」とされています。

子どもへの人工呼吸は、大人への人工呼吸と同様に、おでこに当てた手の指で鼻をつまみ、口から息を約1秒かけて吹き込み、胸が持ち上がるのを確認します。一度吹き込んでからいったん口を離し、もう一度吹き込みます。
もし目の前で子どもが倒れて心肺蘇生が必要になったときに、胸骨圧迫と人工呼吸ができるように、自治体などの講習会に参加しいつでもできるように準備しておきましょう。
「小児」へのAEDの使い方
AEDが到着したら、すぐに使用を開始しましょう。
まず、AEDの蓋を開けて電源を入れます。製品によって、蓋を開けたら自動で電源が入るタイプのものと、ボタンを押して電源を入れるタイプのものがあります。電源が入ると音声ガイダンスが始まるので、AEDの指示に従ってください。
倒れている子どもが未就学児の場合は、小児用のパッドを使用しますが、なければ成人用のパッドを使います。説明書き通りに電極パッドを装着したら、AEDは電気ショックが必要かどうか、心電図を解析します。

電極パッドを装着した後は、人工呼吸や胸骨圧迫を止め、倒れている子どもから離れるようにしてください。
AEDによって電気ショックが必要と判断されたら、音声の指示に従って、誰も触れていないかを確認してから電気ショックのボタンを押してください。「オートショック」という新しい機能を持ったAEDの場合は、電気ショックのボタンを人が押すのではなく、電気ショックが必要とAEDが判断した場合には、自動的に電気ショックが実施されます。
いずれにおいても、落ち着いて音声ガイダンスに従うことで正しく対応することが可能です。
電気ショックが実施された後は、再び音声ガイダンスに従います。倒れている人に変化がなければ、多くの場合、心肺蘇生を再開するよう指示が出ます。ここまでを3分以内に行う必要があります。
いつまで心肺蘇生を実施するか?
基本的には救急隊や医療従事者などに引き継ぐまでは心肺蘇生を継続します。意識が戻ったり、咳き込んだり、払いのける動作などが見られれば中止します。
AEDの電極パッドは継続的に心電図を解析していますので、心肺蘇生を中止しても、装着したままにしておきます。心停止した心臓が心肺蘇生法で一度正常に戻っても、また心停止してしまう場合があるからです。
一連の心肺蘇生法を動画で確認しよう
これら小児に対する心肺蘇生の方法について、「いのちを救う動画」として千葉市消防局が公開しています。ぜひ参考にしてください。
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