
スポーツ中にボールや人がぶつかったり、転倒したりして、歯が折れる、抜ける、グラグラするといったケガは少なくありません。口の中のケガは、見た目にも慌ててしまいがちですが、正しい応急手当てを知っておくことが大切です。今回は、いざという時に役立つ歯や口のケガの応急手当てについて、対処の手順や注意点を分かりやすく解説します。
口より先に!まず確認すべき「頭・首・顎」のケガ
顔や口にケガを負うほどの強い衝撃を受けた場合、まず確認すべきは頭や首、顎に異常がないかです。口の中の出血や歯の損傷に気を取られがちですが、より深刻な事態につながる可能性のあるケガを見逃さないようにしましょう。
頭や首のケガ(脳振盪など)
歯など口にケガが起こるのは、転倒、ボールや相手がぶつかるなどの衝突が原因であることがほとんどのため、これらは頭や首のケガにつながっている可能性があります。
めまいや頭痛などの脳振盪の症状も確認しましょう。
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顎の骨折など異常が疑われるとき
顎の骨折の治療は口腔外科が専門です。ラグビーや格闘技など、顔面への衝撃が起こりやすい競技では、万が一に備え、地域の救護体制をまとめる「エマージェンシーアクションプラン(EAP)」に、近隣の口腔外科をリストアップしておくと、よりスムーズな対応ができます。
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歯が抜けてしまったときの応急手当て

歯が完全に抜けてしまった場合でも、適切な処置をすれば、歯を元に戻せる(再植できる)可能性があります。落ち着いて、以下の手順で対応しましょう。
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歯が欠けた、歯がグラグラする、歯の位置がずれたときの応急手当て
歯が欠けたとき
欠けた歯の破片が見つかった場合は、抜けた歯と同様に歯の保存液に入れて歯科医院へ持参しましょう。
もし、歯が大きく欠けて神経が見えている場合は、強い痛みだけでなく、細菌感染のリスクもあります。できるだけ早く歯科医師による歯の神経の治療(歯髄処置)を受ける必要がありますので、急いで受診してください。
歯がグラグラする・位置がずれたとき
歯がグラグラしたり、元の位置からずれたりした場合も、すぐに歯科医院を受診しましょう。特に子どもの場合、「乳歯だから大丈夫」と軽く考えがちですが、乳歯のケガが、後から生えてくる永久歯に悪影響を及ぼすこともあります。必ず歯科医師の診察を受けてください。
唇や口の中が出血したときの応急手当て

【手順】
歯科と口腔外科どちらに行けば良い?
歯科医師免許を取得している点については、歯科と口腔外科では同じです。口腔外科の主な対象は、口腔の外科手術です。
専門的な口腔内の外科手術が必要な場合には、専門の設備や器具が必要となるので、口腔外科を選択して下さい。
スポーツ中に強い衝撃を受けて口の中をケガをした場合で、歯科と口腔外科どちらに行けば良いのか迷った際には、口腔外科に行きましょう。
マウスピース・マウスガードで歯のケガを未然に予防
歯や口のケガを予防するためには、マウスガード(マウスピース)の着用が効果的です。マウスガードは、歯が折れたり抜けたりするのを防ぐだけでなく、歯で唇や頬の裏側を切ってしまうといったケガも防いでくれます。
ラグビーやアメリカンフットボール、格闘技といったコンタクトスポーツの選手が使うイメージが強いかもしれませんが、近年ではバスケットボールやサッカー、野球など、不意の接触が起こり得る多くの競技で、選手の歯を守るために活用されています。
市販品もありますが、自分の歯型に合わせて作るカスタムメイドのものは、よりフィット感が高く、予防効果も高いとされています。