成長期だから発生しやすいオスグッド病。我慢をしてスポーツを続けると剥離骨折に発展することも。症状に応じた対応で柔軟性を保ちましょう。

成長期に気にしておきたいケガの中で代表的なのが「オスグッド病」(オスグッドシュラッター病)です。10代前半のスポーツを行う男子に好発しています。 オスグッド病のことをただの成長痛と思い込み、適切な対処をせず放置すると最悪の場合、剥離骨折に発展することがあります。このように誤解されがちなオスグッド病について、選手やコーチ、保護者の方に知っておいていただきたいポイントを解説します。

成長痛とオスグッド病の似ている点、異なる点

成長痛とは、成長期に明らかな原因がなく、短時間で自然に消失する四肢(手足)の痛みのことを指します。成長痛の場合には、夕方や夜間に痛みが出やすく、翌日には元気に走り回って遊んでいるという特徴があります。

一方、オスグッド病のことをただの成長痛と考え、子どもに我慢してスポーツをさせているとさらに痛みは悪化します。オスグッド病では、骨化していない骨(脛骨)の端が太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に引っ張られて痛みが起きます。

骨と筋肉では成長し始めるタイミングが違い、先に成長が進んだ骨に引っ張られて筋肉が硬くなる、つまり大腿四頭筋に脛骨の端が引っ張られることが原因で起こると考えられています。

ちょっとした工夫が必要なストレッチ

オスグッド病の予防として代表的な対策が、大腿四頭筋のストレッチです。

ただし、オスグッド病のための大腿四頭筋のストレッチをする上で注意しなければならないのは、ストレッチ自体も脛骨の端を引っ張る行為だという点です。つまり、ストレッチをして膝の下の痛みが増すようであれば悪化させる可能性があるので、その場合ストレッチはしないようにしてください。

痛みが増す様子がない場合、ストレッチを行います(痛い場合、無理は禁物です)。伸ばしたい大腿四頭筋は、股関節と膝の関節をまたいでいる筋肉のため、ストレッチをする際にはこの2つの関節の角度がとても重要になります。

通常の大腿四頭筋のストレッチでは、立った状態で身体を横から見たときに上半身と太ももが一直線の状態から、足首の周辺を手で持って膝を曲げていきます。
このストレッチでオスグッド病の痛みが増さなければ大丈夫ですが、痛みが増すようであれば、悪化させてしまう原因になるので止めます。

たいてい、オスグッド病には「太ももの前の筋肉のストレッチをと」アドバイスされることが多いのですが、痛みを我慢してまでストレッチに励んでしまうと、逆効果になってしまいます。

  • 伸ばして痛みが無い場合
  • 痛みがある場合

一つ目のイラストのストレッチで膝の下などに痛みを感じるようであれば、二つ目のイラストのように、股関節を曲げた状態から痛みを感じないところまで少しずつ股関節を伸ばしながらストレッチするようにしてください。立ったままだとふらつく場合は、片方の手を壁についたり、横になっても構いません。

横になって行う場合は、まずは伸ばしたい方の脚を上にして横向きの状態で寝てください。そして、上側の脚の膝を軽く曲げた状態で膝を胸に近づけるように股関節を曲げます。股関節を曲げた状態で足首の周辺を手で持ち、踵をお尻につけるように膝を曲げていきます。膝を曲げた状態を維持しながら、痛みを感じないところまで少しずつ股関節を伸ばしていきましょう。

ストレッチが痛いときはお風呂で温めセルフマッサージ

オスグッド病の改善のために大腿四頭筋の柔軟性を高めることは大切ですが、柔軟性を高める方法は、ストレッチだけではありません。痛みを伴うストレッチは柔軟性を改善させないだけでなく、脛骨の端を引っ張ることによってかえって悪化させてしまう可能性もあります。

ストレッチをして痛い場合は、お風呂に入っているときなどに自分で太ももの前側の筋肉をマッサージすることで柔軟性を高めることができます。

股関節と足首の動きづくり

オスグッド病には大腿四頭筋の柔軟性を高めることも重要ですが、身体の使い方で改善できることもあります。オスグッド病に関係する身体の使い方で特に重要になるのが、股関節と足首です。

股関節や足首の動きが悪くて、膝の動きに頼りすぎていると大腿四頭筋に負担がかかってしまい、オスグッド病の一因となります。ウォーミングアップで股関節や足首の動きを良くすることによって大腿四頭筋に負担をかけずにパフォーマンスを発揮できるようにしましょう。

スポーツ安全協会の外傷・障害予防プログラム(サッカー)のページで紹介している「FIFA11+」をウォーミングアップとして取り入れてみるのもいいでしょう。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター