スポーツ外傷・障害予防-サッカー編

外傷・障害予防プログラム

サッカーにおける外傷・障害の予防プログラムとして国際サッカー連盟(FIFA)が推奨しているFIFA11+の一部を紹介します。

なお、FIFA11+は特別な道具は必要とせず、20分程度で実施可能であることから練習前のウォーミングアップとして実施すること、週に2回以上実施することが推奨されています。

フィールドセットアップ

6組のコーンを約5-6m間隔で置き、コースを作る。
最初のコーンから2人が同時にスタートし、コーンの内側を走りながら様々なエクササイズを行う。最後のコーンを通過したら、外側をジョギングで戻る。戻りは、ウォームアップができてきたら徐々にスピードを増していく。

Part 1 ランニングエクササイズ(8分)

ヒップ・アウト

最初のコーンにジョギングし、ストップして、膝を前に引き上げる。膝を外側に回して、足をつく。次のコーンでは、反対の脚で行う。コースの最後まで繰り返す。2セット。
軸足の膝は内側に入らないように注意する。

ヒップ・イン

最初のコーンにジョギングし、ストップして、膝を横に引き上げる。膝を回して前に持っていき、足をつく。次のコーンでは、反対の脚で行う。コースの最後まで繰り返す。
2セット。
軸足の膝は内側に入らないように注意する。

サークリング・パートナー

ジョギングで最初のコーンまで行った後、サイドステップでパートナーに向かっていき、互いに1周回り(身体の方向は前に向いたまま)、元のコーンに戻る。コースの最後のコーンまで繰り返す。2セット。

ショルダー・コンタクト

最初のコーンまでジョギングした後、サイドステップでパートナーに向かっていく。中央で、互いに横にジャンプして、ショルダー同士でコンタクトする。股関節と膝を曲げ、両足で着地する。元のコーンに戻る。コースの最後のコーンまで繰り返す。2セット。

前後走

スピードを上げて2番目のコーンまで走り、1番目のコーンへバックランニングで戻る。2つ先のコーンまで走り、1つ分バックランニングで戻ることを、コースの最後のコーンまで繰り返す。2セット。

Part 2 筋力・プライオメトリクス・バランス(10分)

ベンチ

〈初級〉スタティック
開始姿勢 うつぶせになり、前腕で上体を支える。肘が肩の真下に来るようにする。
エクササイズ 上体、骨盤、脚を持ち上げ、身体が頭から足まで一直線になるようにする。腹筋と臀筋に力を入れ、その姿勢を20-30秒間保持する。3セット。
重要 体をぐらつかせたり、背を丸めたりしない。臀部を上げすぎない。
〈中級〉アルタネイト・レッグ(片脚ずつ挙上)
開始姿勢 うつぶせになり、前腕で上体を支える。肘が肩の真下に来るようにする。
エクササイズ 上体、骨盤、脚を持ち上げ、身体が頭から足まで一直線になるようにする。腹筋と臀筋に力を入れる。脚を片方ずつ挙げ、2秒間保持。40-60秒間続ける。3セット。
重要 体をぐらつかせたり、背を丸めたりしない。臀部を上げすぎない。骨盤を安定させ、横に傾かせないようにする。

サイドベンチ

〈初級〉スタティック
開始姿勢横向きに寝て、下側の脚の膝を90°曲げておく。下の脚と前腕で体を支える。下の肘が肩の真下に来るようにする。
エクササイズ骨盤と上の脚を上げ、肩のラインと一直線になるようにする。その姿勢を20-30秒間保持する。反対側も行う。3セット。
重要骨盤を安定させ、下に傾かないようにする。両肩、骨盤、脚が前後に傾かないようにする。
〈中級〉レイズ&ロウワーヒップ
開始姿勢横向きに寝て、両脚を伸ばし、前腕で体を支える。下の肘が肩の真下に来るようにする。
エクササイズ骨盤と脚を上げ、上の肩のラインと上の足までが一直線になるようにする。腰を地面に下ろし、再び上げる。20-30秒間続ける。反対側も行う。3セット。
重要両肩、骨盤が前後に傾かないようにする。頭を肩につけない。
〈上級〉レッグリフト
開始姿勢横向きに寝て、両脚を伸ばし、前腕と下の脚で体を支える。下の肘が肩の真下に来るようにする。
エクササイズ骨盤と脚を上げ、上の肩のラインと上の足までが一直線になるようにする。上の脚を上げ、ゆっくりと元に戻す。20-30秒間続ける。反対側も行う。3セット。
重要骨盤を安定させ、後ろに傾かないようにする。両肩や骨盤が前後に傾かないようにする。

シングルレッグスタンス(片足立ち)

〈初級〉ボールを持って
開始姿勢 片足立ち。膝と股関節を軽く曲げる。両手にボールを持つ。
エクササイズ バランスを保ち、体重を立ち足の母趾球上でキープする。30秒間保持。反対の足も行う。踵を上げてつま先立ちで行う、あるいはボールを腰の周りあるいは上げた膝の下で回しながら行う等で、難度を上げることができる。両足2セット。
重要 膝を内側に入れない。骨盤を水平に保ち、横に傾けない。
〈上級〉パートナーと押し合い
開始姿勢片足立ち。パートナーと腕の長さの距離で向い合う。
エクササイズバランスを保ちながら、パートナーと交互に押し合い、バランスを崩させるようにする。30秒間続ける。反対の足も行う。踵を上げてつま先立ちで行うと難度を上げることかできる。両足2セット。
重要膝を内側に入れない。骨盤を水平に保ち、横に傾けない。

スクワット

〈初級〉+トー・レイズ(つまさき立ち)
開始姿勢両足を肩幅に開いて立つ。両手は腰。
エクササイズゆっくりと股関節、膝、足関節を曲げ、膝が90°になるようにする。上体を前傾させる。上体、股関節、膝をまっすぐにして、つま先立ちになる。再びゆっくりと曲げ、今度は少し素早く立ち上がる。30秒間続ける。2セット
重要膝を内側に入れない。背をまっすぐにして、上体を前傾させる。
〈中級〉ウォーキング・ランジ
開始姿勢両足を肩幅に開いて立つ。両手は腰。
エクササイズゆっくりと一定のペースで前方へランジする。股関節と膝を曲げ、着地する脚の膝が90°になるようにする。曲げた膝がつま先より前に出ないように。片脚10回ずつ。2セット。
重要膝を内側に入れない。上体をまっすぐに、骨盤を水平に保つ。
〈上級〉ワンレッグ・スクワット
開始姿勢片足で立つ。パートナーに軽くつかまる。
エクササイズゆっくりと膝を曲げる。できれば90°まで曲げる。再び立ち上がる。今度はゆっくりと曲げ、少し素早く立ち上がる。反対の脚も行う。片脚10回ずつ。2セット。
重要膝を内側に入れない。上体をまっすぐ前に向け、骨盤は水平に保つ。

ジャンプ

〈初級〉垂直ジャンプ
開始姿勢両足を肩幅に開いて立つ。両手は腰。
エクササイズゆっくりと股関節、膝、足関節を曲げ、膝が90°になるようにする。上体を前傾させる。この姿勢を1秒間保持し、できるだけ高くジャンプし、全身をまっすぐに伸ばす。足の母趾球でやわらかく着地する。30秒間続ける。2セット。
重要両足でジャンプ。着地は両足の母趾球で、膝を曲げた状態で。
〈中級〉ラテラルジャンプ
開始姿勢片足で立つ。股関節、膝、足関節を軽く曲げ、上体は前傾させる。
エクササイズ立ち足で約1m横にジャンプし、反対の足で着地する。足の母趾球で、股関節、膝、足関節を曲げてやわらかく着地する。この姿勢を約2秒間保持し、再びジャンプし反対の足で着地する。30秒間続ける。2セット。
重要膝を内側に入れない。上体を安定させ前に向け、骨盤は水平。

Part 3 ランニングエクササイズ(2分)

バウンディング

軽く助走をし、6-8歩、膝を高く引き上げてバウンディングする。残りはジョギングする。
着地足の膝をできるだけ高く引き上げ、反対側の腕を振る。
上体はまっすぐに保つ。足の母趾球で、膝を曲げて着地し、跳ぶ。膝を内側に入れないようにする。
ゆっくりとしたジョギングで戻りリカバーする。2セット。

プラント&カット

4-5歩まっすぐにジョギングする。次に右足をつき(プラント)、左へ方向を変えて加速する。
5-7歩スプリント(全力の80-90%)し、減速し、今度は左足をついて右へ方向を変える。膝を内側に入れないようにする。
ピッチの反対サイドにつくまで繰り返し、ジョギングで戻る。2セット。

実施上の注意

プログラムのキーポイントは、すべてのエクササイズを適切な技術で行うことです。
下肢を真っすぐに保ち、膝をつま先の真上に置き、やわらかく着地するといった、正しい姿勢と良い身体のコントロールに注意を払いましょう。

サッカー競技目次

<著者>

帝京大学 医療技術学部 准教授

佐保 泰明

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