
スポーツ中に起こるケガのうち、最も発生頻度が高いケガが足関節(足首)の捻挫(ねんざ)です。よく起こるケガなので軽く考えてしまう選手やコーチ、保護者の方がいらっしゃいますが、適切な対処が必要です。
捻挫とは「靭帯」が損傷した状態

捻挫とは、骨と骨をつないで関節を安定させる役割を果たす靭帯が損傷している状態のこと。
つまり、足関節捻挫とは、足首を捻ることによって靭帯が伸びたり、切れたりする状態です。
捻挫は靭帯の損傷度合いによって、Ⅰ度からⅢ度に分類されます。
■ Ⅰ度: 靭帯のオーバーストレッチ
■ Ⅱ度: 靭帯の部分断裂
■ Ⅲ度: 靭帯の完全断裂
足関節捻挫のほとんどが、足を内側に捻って、足首の外側の靱帯を痛めます。
足首の外側にある靭帯は1つではなく複数あるため、どの靭帯を損傷したかを整形外科等で確認することが重要です。

病院を受診する前にスポーツ現場でできる対応が、RICE処置です。RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの英語の頭文字を用いた代表的な応急手当です。
足首を捻った際には、運動を中止しケガした足首を動かさないで(R:安静)、氷を入れたビニール袋や氷嚢をケガの部位に当てて冷やします(I:冷却)。
ビニール袋や氷嚢を固定させるために弾性包帯などを使って足先の方から圧迫しながら巻いていきます(C:圧迫)。
最後にケガの部位の血液が心臓へと戻りやすくするためにタオルや毛布などをふくらはぎの下に置いてケガしたところを心臓より高い位置に挙げます(E:挙上)。
スポーツ安全協会のホームページにある『救急ハンドブック』のRICEの処置ページもご覧ください。
ひどい場合は骨折の疑いも。医師の診察が重要になる
スポーツ中に足首を捻ってしまったときに注意しなければならないのが、骨折です。体重をかけて歩けないときや見て分かるような腫れがある場合には、骨折の疑いもあるため、医師の診察を必ず受けましょう。
特に成長期の子どもの場合には、整形外科等の医師の診察を受けて骨折の有無を確認するようにしてください。
日本には、スポーツや運動に関連する医師の認定制度が3種類あります。受診の際の参考にしてみてください。
一つ目が日本医師会が認定する健康スポーツ医、二つ目が日本整形外科学会が認定する日本整形外科学会認定スポーツ医、三つ目が、日本スポーツ協会の日本スポーツ協会公認スポーツドクターです。それぞれのウェブサイトに、認定ドクターを地域ごとにまとめた名簿や一覧が掲載されています。
また、安全に早期にスポーツに復帰するためには、適切な診断と処方によるリハビリテーションが重要になります。十分なリハビリテーションを行わないうちに復帰すると、関節を安定させる役割を担う靭帯を損傷しているので、足関節が不安定になったり、痛みが残る原因となったり、さらには、スポーツのパフォーマンスを低下させたりする原因ともなります。再発を予防するためには、足関節捻挫を軽視せず専門の医療機関を受診しましょう。
足関節捻挫とバランストレーニング

足関節捻挫の予防や再発予防のために、バランストレーニングが有効です。
バランストレーニングには、片足で立ったり、片足立ちを目を閉じて行ったりするなどさまざまな方法があります。
バランストレーニングをスポーツの現場で簡単に導入する方法として、国際サッカー連盟(FIFA)が推奨する「FIFA11+」を取り入れてみるのもひとつの方法でしょう(11+ 日本語版が日本サッカー協会のホームページで紹介されています)。
FIFA 11+ は、サッカーの練習前のウォーミングアップとして実施するために開発されたものですが、ほかのスポーツにも役立つ要素が多いので参考にしてみてください。
スポーツ安全協会の外傷・障害予防プログラム(サッカー)のページでも、FIFA 11+ を分かりやすく紹介していますのでこちらも併せて参考にしてください。