成長スパートに合わせた「段階別」トレーニング

「子どもは大人のミニチュアではない」。子どもは身体が成長中で未熟なため、大人と同じようにトレーニングしても大丈夫というわけではありません。身体の成長過程に合わせてトレーニングを行っていくことがとても重要です。今回は成長期の子どもたちに適したトレーニングについて解説します。

子どもの身体の成長過程を知っておきましょう

神経系、呼吸・循環器系、骨・筋肉では、それぞれ成長タイミングが異なります。大人であれば競技特性に合わせて、さまざまなトレーニングができますが、子どもの場合には、身体の組織や機能の成長程度によって、それぞれの時期に適したトレーニングを行うのが望ましいと言われています。トレーニングの効果を最大化するためには、子どもたちの発育・発達のタイミングに合わせて、各機能を高めるトレーニングを実施することが重要です。

神経系とは、身体の動かし方の上手さなどのことで一般的には運動神経(コオーディネーション能力)と呼ばれています。神経系は成長が早く、8歳から12歳が特に発達する時期のため、小学生は神経系が刺激されるさまざまな動きやスポーツをするのに適した年代です。

呼吸・循環器系は、競技力や持久力に関与しており、その発達は、11歳から12歳頃から一気に高まると言われています。

骨・筋肉とは、身長の伸び、筋力(力強さ)、筋の大きさです。13歳から14歳になると神経系の発達がほとんど止まり、代わって骨や筋肉が成長していきます。

このように、運動神経の発育・発達が始まり、その後持久力、骨・筋力へと成長が進みます。順序に違いはありませんが、一人ひとりの成長スピードには個人差があり、大きく分けて、早く成長する早熟のタイプと成長がゆっくりの晩熟のタイプが存在します。

例えば、女子の早熟のタイプには、小学校高学年で身長の伸びが止まる子がいたり、一方で、男子の晩熟のタイプには、大学生になっても身長が伸びる子がいたりします。上に記載した年齢と発育のタイミングは目安とし、個人差があるということを認識した上で、指導者は個人差を見極め、トレーニング内容を計画するのが望ましいでしょう。

この個人差を考慮するためには、「成長スパート」の把握が役立ちます。

成長スパートとは、思春期の急激な身長の伸び、つまり骨・筋肉の成長が高まるタイミングのことです。成長スパートを知るには、定期的に身長を測り、成長の変化を知ることです。成長の変化をグラフにした身長曲線から成長スパートを把握することができます。

成長スパート前は神経系を刺激するトレーニングが効果的

成長スパート前の子どもたちは、持久力に関係する呼吸・循環器系や骨・筋肉が発達しているとは言えないので、神経系を刺激するトレーニングを取り入れるのが最適な時期です。神経系を刺激するトレーニングと聞くと難しく感じるかもしれませんが、さまざまな動きをさせることだと思ってください。普段の練習にさまざまな運動を取り入れることで、神経系を刺激することができます。水泳のように水の中で動くことは、陸上で動くときとは異なる刺激を与えることになるので、バランス能力や空間認知能力などを伸ばすことができます。

神経系を刺激するトレーニングで気をつけなければならないのが、過剰な大人の介入です。子どもたちの安全や障害予防のために大人が見守るのは必要なことですが、身体の動かし方について、過度に修正するような指導をすると、子どもが自然に正しい動きを学ぶ機会を失うことになります。

明らかに障害を引き起こすようなエラー動作に対しては修正する指導が必要ですが、そうではないエラー動作を繰り返したり、うまい子の身体の使い方を見て自然に学んだりすることは、神経系の刺激や発達の過程ではとても重要です。

成長スパート前期は、持久力トレーニングの始めどき

 呼吸・循環器系の発達が一気に高まるとされている11歳から12歳頃、かつ成長スパートに入っている子どもに対しては持久力トレーニングを積極的に実施できるタイミングだと言えます。

 
持久力トレーニングには、有酸素性と無酸素性の2種類があります。有酸素性とは、簡単に言えば、ゆっくりとした一定のスピードで長時間運動を継続する持久力トレーニングです。一方、無酸素性とは、10秒ダッシュして、その後30秒はジョギング、さらに10秒ダッシュといったような高い強度の運動と低い強度の運動を繰り返すトレーニングのことです。
 
同時に注意しなければならないのは、成長スパートに入っているということは、骨と筋肉が成長中の時期とも重なるという点です。過度なストレスが骨や筋肉にかかってしまうと、オスグッド病のような障害の原因になります。
 
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持久力トレーニングが、オスグッド病のような障害の原因にならないようにするためには、運動時間もしくは距離でトレーニング量をコントロールすることで予防しましょう。

障害予防の観点としてさらには、トレーニング量をコントロールしていたとしても、同じ動きを繰り返していると、同じ部位にストレスが集中してしまいケガの原因となります。また、サッカーやバスケットボールなどの球技スポーツで走る方向は前だけではありません。特に、無酸素性の持久力トレーニングをする際には、さまざまな方向へ走らせたり、方向転換やステップなどを取り入れるようにしてください。

11歳から12歳頃であっても、成長スパート前の晩熟タイプの子どもは、まだ本格的な持久力トレーニングを開始するには適していないでしょう。長時間・長距離を走らせたり、階段ダッシュなどの走り込みをしたりするような持久力トレーニングではなく、ゲーム性を取り入れた運動や遊びなどを通して、間接的に持久力が高まるような工夫が必要です。

成長スパート後期には、筋持久力を高めるウエイトトレーニングを取り入れてみよう

成長スパート期の後半、13歳から14歳頃は骨・筋肉が急速に成長するタイミングと言われています。徐々に、筋肉を刺激するウエイトトレーニングに取り組み始めましょう。

ウエイトトレーニングと聞くと、ぎりぎり持ち上げられるような重さで追い込むような筋肥大のためのトレーニングをイメージするかもしれませんが、ウエイトトレーニングにもさまざまなものがあります。正しいフォームの習得に始まり、軽いウエイトで15回から20回繰り返すような筋持久力を高めるもの、筋肉を大きくする筋肥大を目的とするもの、重いものを持ち上げる筋力や爆発的な力を発揮するパワーを付けることを目的にするものなど、それぞれ目的に応じて行うトレーニング内容は異なります。

筋肥大を目的としたウエイトトレーニングは、骨が成長中の子どもにはケガのリスクが高いため、避けなければなりません。この時期に取り入れるなら、正しいフォームを習得した上での「筋持久力を高める自重ウエイトトレーニング」が適しています。筋肉を刺激するだけでなく、骨の成長を促す刺激にもなるため、積極的に取り組むとよいでしょう。

重要なため繰り返しますが、「正しいフォームを習得している」という点が前提です。誤ったフォームで取り組んでしまうと、ケガのリスクが高くなるだけでなく、骨の成長を促す刺激にもならず、デメリットしかありません。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター