やる気がなさそうに見える、息が上がりやすい、走っているのになかなかスタミナがつかない、イライラして怒りっぽい、あまり集中できていない…… といった症状の選手はいませんか? このような子どもには、実は「隠れ貧血」の可能性があります。今回は、スポーツ選手に見られる「隠れ貧血」について、その原因と対策をご紹介します。
「隠れ貧血」とは?—通常の血液検査では見つかりにくい鉄不足
隠れ貧血とは、医学的な診断名ではありませんが、血液のヘモグロビン濃度は正常値でありながら、血清鉄やフェリチンの値が低下している状態を指して一般的にそう呼ばれることがあります。血清鉄とは、血液中にある鉄のことを指します。フェリチンは、肝臓や脾臓で鉄を貯蔵しているタンパク質のことで、その量を測ることで貯蔵鉄の状態を把握できます。血清鉄とフェリチンを調べることで、体内の鉄の在庫がどれくらいあるかを把握できます。
血液検査では、ヘモグロビン濃度だけを調べるのが一般的ですが、息が上がりやすい、疲れやすいなどの症状がある場合には、より詳しい血液検査で血清鉄とフェリチンの値を調べてもらうことができます。
鉄が不足すると下記の順序で進行するため、フェリチンや血清鉄の値を知ることは大切です。
1 貯蔵鉄の減少=フェリチンの値の低下
2 血清鉄の減少
3 ヘモグロビン濃度の低下=貧血
隠れ貧血の症状には、疲労感や集中力の低下だけでなく、肌の乾燥、爪のもろさ、枝毛や抜け毛の増加なども含まれます。
スポーツ選手に「隠れ貧血」が起こりやすい理由

鉄は赤血球や筋肉の構成成分であるだけでなく、エネルギー生成や神経伝達にも重要な役割を担っています。
隠れ貧血の主な原因のひとつは、食事から摂取する鉄分が不足していることです。スポーツをすることで筋損傷や発汗などにより失う鉄の量が増えるため、スポーツ選手は積極的に摂取する必要があります。
鉄分を多く含む食品として代表的なのが、レバーや赤身肉、ほうれん草などです。鉄分には、レバーや赤身肉などの動物性食品から摂れるヘム鉄と、ほうれん草や小松菜などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。ヘム鉄は単体でも吸収率が高いですが、非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が高まるため、ビタミンCを多く含む野菜や果物と一緒に摂取することが大切です。
成長のために必要とされる鉄が増える成長期の子どもや、月経のある女性は、多くの鉄を必要とするため、隠れ貧血のリスクが高くなります。
成長期は身長や筋肉量に加えて血液量も増えるため、鉄の必要量が多くなると言われています。一方で、女性は月経によって鉄欠乏になりやすいと指摘されています。
また、ランニングでの接地やバレーボールでの着地などで踵への強い衝撃を繰り返すことで赤血球が壊れ、ヘモグロビンが溶出する「溶血」によって起こる貧血もあります
「隠れ貧血」が持久力トレーニングへ与える影響
隠れ貧血についてスポーツ現場で特に考慮しなければならない点のひとつが持久力への影響です。呼吸・循環器系の発達に伴い持久力(有酸素能力)が急激に伸びるとされている11歳頃から12歳頃、つまり小学校の高学年から中学生の頃が、積極的に持久力トレーニングに取り組むと良い時期でしょう。この時期には、スタミナをつけるために持久力トレーニングに取り組ませますが、練習や試合で疲れやすいと言う選手に対して、疲れやすい理由が持久力の低さだと決めつけるのではなく、隠れ貧血の可能性も視野に入れる必要があります。気になる症状がある場合は、血清鉄やフェリチンの値を含む詳しい血液検査で状態を確認しましょう。
学習面やメンタルにも及ぶ「隠れ貧血」の影響
隠れ貧血の症状には、持久力や集中力の低下があげられるため、スポーツパフォーマンスに目が向けられがちですが、学習面や心理面への影響にも注意が必要です。
鉄は脳への酸素供給にも関わっているため、不足すると学校の授業での集中力や記憶力の低下にもつながる可能性があります。また、鉄は、気持ちを穏やかに保つ働きのある神経伝達物質「セロトニン」の合成をサポートする役割を担っているため、不足するとイライラや不安感など、感情のコントロールが難しくなる可能性があります。心配な症状が見られる場合には、一度専門家に相談してみましょう。
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