スポーツ事故を防ぐ「屋外・屋内・遠征先」場所別 安全点検ガイド

スポーツを安全に行うためには、屋外や屋内、遠征時の場所に応じた環境づくりが大切です。
今回はスポーツ事故を防ぐために必要な環境づくりのための安全点検のヒントを、指導者や保護者の方にとっても分かりやすくご紹介します。

屋外スポーツ:天候変化と器具の「盲点」をチェック

屋外でスポーツ活動を実施する際、起こり得る事故を防ぐために疎かにしてはいけないのが、まずは天候と設備・器具などの日常的な点検です。 屋外スポーツでは、屋内活動と違って、熱中症や低体温症、落雷事故などの天候に関連する事故のリスクをケアする必要があります。 熱中症については、気温だけでなく湿度も関与するため、その掛け合わせである「暑さ指数」を運動前と運動中に把握する必要があり、暑さ指数によって運動の内容や時間帯、休憩の長さや頻度などを調整することが求められます。暑さ指数は、天気予報やインターネットなどで最寄りのデータを確認するだけでなく、実際の活動場所で測定することが大切です。暑さ指数は日向や日陰、地面からの高さなどの影響も受けるため、天気予報などで得られる暑さ指数の数値と実際の現場での数値には誤差がでる可能性があります。

冬季や自然の中などの屋外活動では、低体温症のことも理解しておきましょう。低体温症は、気温と風が影響するため、特に、休憩時間や運動後は身体が冷えないようにすることが大切です。また、試合でベンチに控えている選手は、座っているベンチによって身体が冷えてしまうため、ベンチに毛布や敷物などを敷くことで身体の熱が奪われないような工夫が必要です。

体温に関係する熱中症と低体温症に加えて、屋外スポーツで重要になるのが落雷事故の予防です。 熱中症のリスクを予測する暑さ指数のように、落雷事故を予防するためには気象情報をタイムリーに確認することが大切です。雷注意報や雷予報アプリを活用することで、より正確な情報が得られるでしょう。雷予報アプリの中でも気象庁が提供している雷活動の予測情報サービス「雷ナウキャスト」は便利で、60分先までの予測を確認することができます。
また、安全な避難場所を確保した上で競技中止や避難、再開の基準を確認し、関係者全員が避難場所での注意点を理解しておくことが大切です。ただ、急な天候変化はいつでも起こり得るので、アプリの情報だけでなく、実際の活動場所の空模様や体感湿度などへ常に注意を払いましょう。

設備と器具の日常的な点検は軽視されがちですが、競技特有の事故を防止する上でとても重要です。

例えば、野球では、打撃練習中に事故が起こりやすいため、ネットの配置はとても大切です。ネットの穴だけでなく、ネットとネットの隙間を打球が通り抜けてこないか、または打球がネットにぶつかって守備の選手に当たる可能性がないかなどをチェックします。移動中や強風で倒れた支柱が頭にぶつかる事故も発生しています。

強風で用具が倒れる事故は野球のネット以外にも、サッカーゴールなどでも起きています。強風による事故に加えて、選手がぶら下がったり、跳びついたりすることによってサッカーゴールが転倒する事故も発生しています。

屋内スポーツ:「室内熱中症」と「床の劣化」の危険性

屋内スポーツは、屋外スポーツに比べると天候の影響を受けにくいと思われがちですが、冷房のない体育館や風通しの悪い体育館でも、実は熱中症のリスクがあります。空調が利いた施設での屋内スポーツでも油断せず、しっかりと水分補給に努めることが大切です。運動前の水分補給が十分でないと、運動を始める時に、すでに脱水状態の可能性もあります。

屋内スポーツにおいても、設備や器具の日常的な点検は習慣づけてください。見逃しがちなのが、床の点検です。ドリンクや汗の水滴が落ちて床が濡れると、滑りやすくなって足首や膝関節を捻ったり、転倒したりするリスクが高まります。また、体育館の床板が剥がれて腹部や臀部に刺さるという大きな事故も報告されています。

日常的にフローリングなどの不具合がないかを点検し、不具合を発見した場合には、施設管理者に速やかに報告しましょう。報告する際には、写真を撮影するなどの方法で不具合の状態を記録するとよいでしょう。

遠征・合宿:初めての場所でも迷わない「救護体制」の事前準備

遠征先の活動場所は普段と異なる環境になるため、通常以上に求められるのが、救護体制の準備です。遠征先の最寄りの病院やAED(自動体外式除細動器)などの救命用具の救護体制を整えるために必要な情報を収集しましょう。地域によって救急車の現場到着時間は異なるため、遠征先の情報は地元の方に確認するとより正確な情報が得られます。救護体制を整えるためには、エマージェンシーアクションプラン(EAP、緊急時対応計画)を事前に作成しておくと、いざという時に役立ちます。


遠征先の運動施設に到着したら、事前のEAP作成に加え、AEDの場所や救急車の経路などに変更点がないかを確認します。参加するスタッフや保護者と共有し、事前に打ち合わせしておくとより安心です。急な工事で道路が利用できない場合や、門やドアに鍵がかかっている場合も考えられます。毎年、同じ遠征先であったとしても、油断せずに訪問のたびに現地では最終確認をしましょう。

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<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、日本健康医療専門学校、横浜スポーツ&医療ウェルネス専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター