ノンコンタクトスポーツに多いケガ予防のための「セルフケア」と「動作改善」

卓球、バドミントン、バレーボール、陸上競技、水泳など、選手同士の接触がほとんどないスポーツは「ノンコンタクトスポーツ」と呼ばれます。これらの競技では、人にぶつかることがない代わりに、急な方向転換や反復動作によって、捻挫、靭帯損傷、疲労骨折など、非接触ならではのケガが発生しやすいのが特徴です。今回は、ノンコンタクトスポーツで起こりがちなケガの具体的な特徴と、スポーツ現場ですぐに役立つ応急手当て(応急処置)の基本について詳しく解説します。

ノンコンタクトスポーツでは、素早い動きがケガの原因に

スポーツ中にプレーヤー同士が接触しないノンコンタクトスポーツには、卓球やバドミントン、テニスなどのように素早く方向転換する動きが求められる競技があります。そういったスポーツのケガを見ていきましょう。

 もっとも起こりやすいケガのひとつが、靱帯損傷を伴う捻挫です。捻挫の疑いがあるときにはRICE処置を実施するのが基本です。

 
靱帯は、骨と骨をつなぎ、関節を安定させる役割を担っています。素早い動きをコントロールできなかったり、バランスを崩してしまったりすると、足首や膝などの靱帯を伸ばしてしまい、捻挫が起こります。足首の捻挫はスポーツ中のケガの中で一番多く起こるケガです。ります。
 
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膝の靭帯損傷は、損傷の程度によって治療方法や回復期間は大きく異なりますが、手術が必要となり、競技に復帰するのに10カ月以上かかる場合があります。
 
特に、手術が必要となり、復帰するのに長期間かかるケガが前十字靭帯損傷です。前十字靭帯は、膝を安定させている4つの靱帯のひとつで、この靱帯の損傷や断裂はスポーツで予防したいケガの代表格です。

靭帯損傷の対策として「つま先と膝の向き」をそろえる

素早い動きの方向転換で気をつけなければならないのが、つま先と膝の向きをそろえることです。

方向転換をするときに、つま先が外側を向き、膝が内側を向く姿勢は、膝の前十字靭帯や足首の内側の靱帯を損傷しやすいと言われています。また、ジャンプからの着地姿勢のときに、膝がつま先より内側を向く姿勢も、膝の前十字靭帯を損傷しやすいため、避けたい姿勢です。

膝が内側に向かないようにするために、太ももの内側や外側の筋肉の柔軟性を高めるためのストレッチや、お尻の筋肉の筋力を高めるためのトレーニング、片足でのバランストレーニングなどに、予防トレーニングとして取り組むことができます。

そして、重要になるのが、方向転換をするときにつま先と膝が同じ方向を向くように「ピボットターン」を習得することです。

「ピボットターン」は、バレーボールや卓球、バドミントンのフットワークなどでよく使われているターンのひとつです。

両足で立った状態からしゃがみ、360度素早く動けるアスレティックポジジョンまたはアスレティックスタンスを作ります。このアスレティックポジション/スタンスから踵を少し浮かせた状態で、母指球(親指の付け根あたりの膨らんだ部分)を軸に体を回転させるのがピボットターンです。

このピボットターンでつま先と膝を同じ方向に向ける練習をし、身体を慣れさせましょう。

ノンコンタクトスポーツに限らず、方向転換があるスポーツでは、ウォーミングアップに「ピボットターン」を取り入れ、つま先と膝が同じ方向を向いて方向転換ができるよう、動作を習得しましょう。こうすることで素早い方向転換ができ、膝や足首の捻挫の予防としても役立ちます。

同じ動きを繰り返すことによる「障害」のリスク

ノンコンタクトスポーツでは、競技によって同じ動きを繰り返す特性があるため、ストレス(負荷)が慢性的にかかることによる「障害」のリスクも高くなります。

一例として、持久力トレーニングに励んでいる子どもに多い「シンスプリント」と呼ばれる脛(すね)の部分で起こる障害が、悪化して起こる疲労骨折があります。

脛の部分が痛くて整形外科を受診し、レントゲンを撮ったとしても、普通の骨折であればすぐにレントゲンに写ります。しかし、疲労骨折の場合はレントゲンに写る状態になるのに2週間以上はかかります。骨折ではないと言われても、痛みが続く場合はプレーは再開せず、再度受診するようにしましょう。最近では、超音波エコーによりすぐに確定診断ができるスポーツドクターも増えてきました。

慢性的に起こる障害の予防およびリハビリには、特にストレッチなどのセルフケアが重要になります。競技により動作が異なるため、それぞれの競技特性を理解し、ストレスがかかりやすい部位に対してストレッチを行うことは、柔軟性の確保に加え疲労回復にも繋がります。

痛みがあれば、すぐに医師の診察を受けて診断とアドバイスをもらいましょう。疲労骨折の場合にはレントゲンに写るのに時間がかかると考えて、早めに医師に診察してもらい、アドバイスに従ってセルフケアを含めて取り組むことが大切です。

また、オーバーユースも大きな原因です。適切な運動量やメニューを考えることで負荷の軽減に努めましょう。

予防とリハビリに「セルフケア」が欠かせない

 セルフケアは、ストレッチや運動量の調整だけではありません。

栄養バランスの良い食事を摂ることやお風呂や睡眠も身体づくりのための活動のひとつです。
 
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お風呂では湯船に浸かっている時のマッサージを兼ね、押して痛いところがないか、張っている筋肉がないかをチェックすることで早めに障害を見つけることができます。

<著者>

NPO法人スポーツセーフティージャパン ディレクター

陣内 峻

ネバダ州立大学ラスベガス校キネシオロジー学部卒
米国BOC公認アスレティックトレーナー(ATC)
総合学園ヒューマンアカデミー、学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校、日本健康医療専門学校非常勤講師
都立武蔵中学校・高等学校サッカー部トレーナー
米国スポーツ医学アカデミー公認フィットネスエデュケーター