スポーツ外傷・障害予防-柔道編

発生事例の解説

頚椎・頚髄損傷

内股で投げた時や背負投で投げられた時に、前方に頭から落ちて起こりやすい外傷です。寝技で無理に首を曲げた時にも起こると言われています。
内股は片足で立って後方に跳ね上げて投げますが、投げる側も後方に足を上げた時に頭から突っ込んで頚部を痛めることが多いことも分かっています。

投げる時には、安定した状態で相手を投げる動作や、自分が前に突っ込まない動作を身につける必要があります。

急性硬膜下血腫・脳振盪

後方に投げられた時に、多く起こる外傷です。脳振盪は経験者にも発生しますが、重症外傷である急性硬膜下血腫は初心者(始めて4ー5か月以内)に特に起こりやすいのが特徴です。
この外傷は試合よりも稽古で、さらに投げ込みの中で起こりやすいと言われています。初心者は受身がうまくないためですが、もともと人は後方に倒れることが難しいと言われ、技術的および体力的に段階を踏んで練習することが必要です。また投げる方も安定している体勢で投げることができずに放り投げるように投げたり、投げた時に相手に乗ってしまったりすると、投げられた人により大きな力がかかることになり危険です。

さらに、頭部の外傷は繰り返すと重症になりやすいので、受傷時の復帰方法や稽古前の健康状態のチェックも忘れないようにしましょう。

鎖骨骨折

鎖骨骨折は柔道で多く起こる骨折の1つです。投げたり投げられたりするうえで、肩から落ちるなどの受傷機転で小児や中学生、高校生に多くみられます。

肩から落ちるだけでなく、手をついたり、肘をついたりした時に鎖骨の彎曲の強い中央部分に力がかかり骨折します。特に前回り受身が上手にできない人は肩から落ちやすいので注意が必要です。受身だけではなく、バランスを崩した時にも不用意に手をつかないようにする必要があります。

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<著者>

東海大学体育学部 教授

全日本柔道連盟 医科学委員会委員

宮崎 誠司

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