スポーツ外傷・障害予防-バレーボール編

発生事例の解説

膝関節痛

図3:膝の障害

バレーボールによるスポーツ障害のうち、成長期からトップレベルまで最も多いトラブルは膝障害で、特にジャンパー膝が最多となっています。ジャンプ、着地、ダッシュなどの動作を繰り返すことによって、膝を伸ばす大腿四頭筋(図3-①)→膝蓋腱(図3-②)に繰り返しの引っ張る力が加わり、そのため腱に炎症がおこり、痛みを感じる使いすぎによる障害です。
特に成長期では骨の成長(身長の伸び)に筋肉腱の成長が追い付かなくなるアンバランスのため、柔軟性が低下して、いわゆる硬い体となってしまうために起こります。
 
小学生高学年から中学生までは図3-①、②のみならず骨・軟骨(脛骨結節部)の成長障害であるオスグット病(図3-③)が発生するため注意を要します。
運動時の膝前面の疼痛、腹ばいで膝を曲げて尻に踵がつくか否か?など痛みが誘発されるか大腿前面の柔軟性をチェックします。
 
 予防プログラム:痛みの程度によって異なります。
【第1期】運動後の痛みのみの場合は練習前後に大腿四等筋前後面(大腿四頭筋、ハムストリングス)のストレッチと練習後に患部のアイシングを徹底する必要があります。
【第2期】運動中に痛みが出る場合は上記以外にジャンプ、ダッシュ練習を休止する必要があります。
【第3期】プレーに支障をきたす痛みの場合には約1か月はジャンプ動作を休止して下肢の筋バランスの改善を目的としたストレッチを行い、膝圧痛が消失してからプレーを再開することが求められます。

足関節ねんざ

図4:足首の捻挫

足首の靱帯損傷はバレーボールによる急性外傷として最も頻度が高く、かつ重症度の高い障害です。

受傷原因は、主にアタックやブロック時のネット際で、ジャンプ着地時に他の選手の足の上に乗って自分の足首の内返しが強制されることにより突発的に発生します(図4)。
重症の場合は歩けなくなり、退場して処置を行う場合もあります。自分が床で滑って受傷するケースでは中等度の損傷にとどまる場合が多い傾向があります。

応急処置はRICE療法にのっとってまず患部をアイシング、テープや包帯・副木で固定、患肢挙上により安静を保ち、足をついて痛みが強い場合は整形外科を受診する必要があります。レントゲンチェックによる骨折の有無判定、最近では超音波やMRIチェックなどを行うことで診断をします。

予防方法(競技復帰に向けて)として受傷後は足首の運動制限をきたすため、足首の内・外返し、アキレス腱・足趾のストレッチを行います。
痛みや腫れが引いたら足首周辺のチューブトレーニング、運動再開時(片足ジャンプ可能)には足首のスポーツ装具(サポーター)やテーピング固定を行うと心理的にも安定感がでてきます。

腰痛

図5:アタック時の動作と着地の衝撃

腰部の障害はバレーボールにおいて最も頻度が高い障害の一つです。
 
アタックやブロック動作は空中で体の屈伸や捻る動作の繰り返しであり、なおかつ着地時には腰への衝撃が大きくなります。(図5)
最近ではジャンプサーブも頻繁に行われ、ジャンプ回数が増えて障害率も増加しています。さらにフライングレシーブ時は体全体でまさに腰が反り返って胸から胴体着陸するので腰部への衝撃が強くなります。
 
予防プログラム:腰部の安定が目的で腹筋や背筋の筋力強化と体幹のストレッチによる柔軟性獲得が重要です。
 
SLR(仰向けに寝て足を垂直に上げる)、立位体前屈、腹ばいでの踵殿距離による腰腹部の柔軟性チェックを行い、特に股関節周辺の柔軟性が低下していると腰部への負担が増すので、股関節の屈伸、回旋ストレッチにより可動域の改善をはかる必要があります。また体幹の回旋ストレッチも重要です。

肩関節障害

図6:肩のインピンジメント症候群

バレーボールのアタックやサーブ、野球のピッチャー、テニスのサーブ・スマッシュのように肩を大きく振り上げる動作(スローイング)を行うスポーツは特に肩を痛めやすい種目です。
バレーボールでは重く大きいボール(野球に比べ)を空中でヒットするので、衝撃がそのまま肩にのしかかり、計り知れない負担がかかります。

肩関節障害は突発的に起こる急性障害と慢性のオーバーユースによる障害に大別されます。

急性の障害はアタック動作やフライングレシーブ時に起こりやすく、肩甲骨骨折、肩関節脱臼、関節唇損傷(フライングレシーブで手を前に着く)などがあげられます。
慢性障害はインピンジメント症候群(引っ掛かり 図6)、上腕二頭筋腱炎、動揺肩などがあり、炎症や腫れが痛みの原因になります。

肩痛があるにもかかわらず無理してアタックを打ち続けると、知らず知らずのうちに肩周辺の筋肉が萎縮してパフォーマンス低下のみならず慢性疼痛の原因になるので注意が必要です。
肩関節の障害はエースアタッカーに多く、痛くても運動を続けている選手たちが大半です。
アタックする肩にオーバーユースが原因で痛みが発生する傾向があり、アタック練習しているから鍛えられているというのは間違った考えです。

手指の傷害

図7:指の傷害(いわゆる突き指)

手指の傷害として第一に突き指(指の捻挫)が挙げられます。
受傷原因としてブロック時が最も多くなっていますが、最近ではアタックボールのオーバーハンドパス時が増えています。
 
突き指以外にも剥離骨折やさらに重症度の高い靱帯損傷、脱臼、骨折を生ずることがあります。
 
初心者レベルではオーバーパスによる突き指が多く発生します。指の痛みや腫れ、熱感などが主症状です。脱臼や骨折時には変形が生じます。
 
予防法:ブロック時には指を曲げずに伸ばすようにします。手指の屈筋力の強化、指手首の柔軟性強化が必要です。
患指を守るために隣接指とをテーピングで固定するバディ固定法など、テーピング固定は治療のみならず予防的にも有用です。

バレーボール競技目次

<著者>

杏林大学整形外科

(公財)日本バレーボール協会 医事委員会 顧問

林 光俊

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