スポーツ外傷・障害予防-ラグビー編

外傷・障害の特徴

年齢別の外傷発生頻度

ラグビーにおけるスポーツ安全保険の傷害発生の頻度は、10万人当たり5,868件で、これは全スポーツ種目の平均的な発生頻度(2,160件/10万人)と比較すると約2.7倍であり、高い傾向にあります。

男子は、6,111件/10万人で、特に大学生(19~22歳)が最も高く、23,040件/10万人でした。これは、同年代における全スポーツ種目の平均的な発生頻度の約5.4倍に相当します。女子は、3,650件/10万人で男子と同様に高く、ピークとなる大学生では7,190件/10万人となり、これは全スポーツ種目の平均的な発生頻度の約3倍に相当します。

部位と外傷の種類

部位ごとの傷病種別では手の指の骨折の割合が最も高く全体の約10%、次いで足関節捻挫が約8%、膝の捻挫が約7%となっています。

他の競技に比べて外傷の発生頻度が全体的に高く、特に頭頚部(他競技平均の4.2倍)、肩関節・上腕(他競技平均の4.2倍)、胴部(他競技平均の4.2倍)における頻度が高いという特徴があります。

年齢別の部位と外傷の種類

世代別の受傷傾向として、未就学児~中学生(0~15歳)は、骨折・ひびの割合が46%~58%と高く、一方で高校生以上(16歳以上)になると、骨折・ひびの割合が低くなり、捻挫・突指が最も高くなります。捻挫・突指は、大学生(19~22歳)では、約47%を占めます。

未就学児~小学生(0~12歳)では、上肢の外傷が多く、特に手・指の骨折が多くみられました。

中学生(13~15歳)では、上肢、次いで下肢の外傷が多くみられました。上肢では手・指の骨折と肩関節・上腕の脱臼、捻挫、骨折、下肢では足関節の骨折、捻挫、靱帯損傷が多くみられました。

16~29歳の世代では、下肢の外傷が多く発生しており、主に膝関節の靱帯損傷や足関節捻挫が多くみられました。上肢は肩関節・上腕の脱臼や捻挫が多くみられました。これらの外傷はタックル動作に起因すると考えられます。

ラグビーの特徴

  • 外傷の発生頻度は、男女とも他種目に比べ高い
  • 外傷の発生頻度は、大学生世代において最も高い
  • 他の競技に比べ頭頚部や肩関節における発生頻度が高い
  • タックル動作に起因する外傷が多いと考察される
ラグビー競技目次

<著者>

流通経済大学 スポーツ健康科学部 教授

日本ラグビー協会メディカル委員会・安全対策委員会 委員

山田 睦雄

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