スポーツ外傷・障害予防-ラグビー編

発生事例の解説

肩関節脱臼

タックルに行く際に、頭が下がり背中が丸まり、肩甲骨が外側に開いた状態で、両上肢を使って身体の芯で相手をとらえられず、タックルポイントがずれて、一方の上肢だけで相手をとらえてしまうことがあります。その際、自分だけ先に倒れてしまった結果、前進する相手に自身の一方の上肢を持っていかれることで発生することが多い症状です。

  • 自分から先に倒れてしまい前進する相手にタックル側の肩関節から上肢を持っていかれるPassive Tackle

膝関節内側側副靭帯損傷

タックルで膝が外反する(外に反り返る)

ボールキャリアが膝関節の外側からタックルを受けたり、密集で味方や相手が膝関節の外側から乗られることで、膝関節が外に反り返る(外反)ことにより受傷することが多い症状です。
時には前十字靭帯損傷も合併した複合靭帯損傷となることもあります。

重症頭頚部外傷(急性硬膜下出血・頚髄損傷など)

ラグビーにおいて、これらの発生頻度は決して多くありませんが、相手の進行方向に頭を当ててタックルに入る「逆ヘッドタックル」や、自身の股関節より頭の下がった状態で密集に参加し、直接相手から頭部を強打されたり、または地面に頭をぶつけた際に相手や味方に上から乗られて頚部が屈曲回旋されたり、またスクラムが崩れて頭から墜落して頚部を屈曲回旋された際などに、後遺障害の原因となる重傷障害を発症します。

  • 頭の位置が相手の身体の前にある逆ヘッドタックル
  • ローヘッドの状態でのラック参加。下肢が前に出なくなり、矢印の方向に頭部から墜落していく
  • スクラムが崩れる
頚髄損傷の理解のためのイメージ図

屈曲・回旋ストレスによる頚髄損傷
a. ヘッドダウンタックル時の過屈曲
b. 逆ヘッドタックル時の屈曲・回旋
c. C5/6脱臼時のイメージ
d. 椎関関節脱臼のイメージ

ラグビー競技目次

<著者>

流通経済大学 スポーツ健康科学部 教授

日本ラグビー協会メディカル委員会・安全対策委員会 委員

山田 睦雄

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